女王蜂の神秘の能力とミツバチの社会づくり
●女王蜂の神秘の能力
ひとつの巣には、3万匹とも4万匹ともいわれるミツバチが密集して生活しています。
多い時には10万匹のミツバチがひとつの巣のなかで社会生活を営んでいます。
この中で女王蜂はただ1匹だけしか存在が許されていません。ミツバチは、女王蜂の他に、同じメスである働き蜂とオス蜂の3種類に分かれています。全体の95%は働き蜂となっており、オス蜂は約5%しか存在しないのです。
女王蜂の体は大きく、太くて長いお腹をもっています。色つやも明るい褐色をしていますので、たくさんの働き蜂の中にいても、すぐに見分けることができます。

女王蜂(中心)と働き蜂
女王蜂の群における役割は産卵です。女王蜂は来る日も来る日も毎日卵を生み続けます。
女王蜂が、1日に産み付ける卵の数は1,500個から2,000個にものぼります。多い時には3,000個の卵を産み付けることになります。これは1分間に2個の卵を産み続けることになります。
群の勢いがよくなり一族が繁栄するかどうかは、すべて女王蜂の産卵力にかかっているといえます。
女王蜂の周りにはいつも世話役の働き蜂が付き添っています。絶えずローヤルゼリーを与え続けているのです。
女王蜂の生む卵には有精卵と無精卵があります。有精卵からは働き蜂が生まれ、無精卵からはオス蜂が生れます。女王蜂も有精卵から生まれ、働き蜂の卵と何ら変わりはありません。
女王蜂になるか、働き蜂になるかは、与えられるエサがローヤルゼリーか、花粉だんご(花粉にハチミツを混ぜ団子状に固めたもの)かによって決まります。
女王蜂の体の大きさは働き蜂の約2~3倍になり、寿命も30~40倍と長生きするといわれています。
この女王蜂の神秘の産卵力と生命力を生み出している源泉がローヤルゼリーなのです。
女王蜂はこの他にも特殊な能力を持っています。働き蜂となる有精卵とオス蜂となる無精卵をそれぞれ、巣房を間違うことなく産み付けます。それぞれ巣の大きさが違っており、女王蜂は巣の違いを足の感覚で見分けているといわれています。
こうした驚きの能力を持つ女王蜂ですが、巣の中のリーダーという訳でもないようです。女王蜂の役割はあくまで産卵であり、ミツバチの群の維持と統制は働き蜂によってなされています。働き蜂は成長の段階によりそれぞれ作業を分担し、休みなく働き続けるのです。
働き蜂の仕事には、巣房を作ることとその修理、育児、巣内の清掃、集蜜・貯蜜、花粉の採集、外敵との戦いとまさに生殖以外のすべての機能を担っているのです。
●新女王蜂のための王台作り
巣の周りに花が咲き、草木が生い茂る初夏には、ミツバチの動きが活発になってきます。そしてミツバチの巣にはオス蜂が新しい仲間として加わります。しかし、オス蜂は一切の仕事をせず、ただ働き蜂に食べ物をもらっているだけです。
オス蜂が現れたということは、巣の中のミツバチが多くなりすぎたため、新しい女王蜂を育て分家して別の新しい巣づくりをするという合図でもあるのです。
働き蜂たちは、新しい女王蜂を育てるための『王台』と呼ばれる特別な部屋をつくります。王台は、働き蜂を育てる小部屋よりもずっと大きくらっかせいのような形をしています。巣の下側が長くなっていて、垂れ下がるように数ヶ所につくられます。

完成した王台 王台に満たされたローヤルゼリーと女王蜂の幼虫
女王蜂は、数日置きにすべての王台に卵を産み付けます。3日目になって幼虫が孵化すると、働き蜂たちは入れ替わり立ち替わりに、咽頭腺からでてくる特別なミルクのような物質、「ローヤルゼリー」をたっぷりと王台に満たします。王台の中の幼虫は、まるでローヤルゼリーの上に浮いているような状態になります。
その量は、幼虫の成長と共に増え、400 mg ほどになったところで、働き蜂は部屋の入り口に固く蓋をとじてしまいます。
外にでた新女王蜂は、他の王台に針を突き刺し、中の幼虫やさなぎを次々に殺します。
ミツバチの社会では、2匹の女王蜂は許されないのです。
もし同時に2匹の新女王蜂が生れてきたときには、どちらか一方が死ぬまで戦い続けるのです。
新女王蜂は、それから数日のうちに、オス蜂を引き連れて結婚飛行に飛び立ち、高い空の上で交尾をします。
この時、交尾したオス蜂たちは死んでしまうといわれています。
選ばれなかったオス蜂たちは巣に舞い戻ってきますが、オス蜂たちには交尾以外の役割はなく、エサを食べるだけで一切の仕事をしなくなります。
厳しい自然界では、蜜がすくなくなる秋口に、オス蜂は巣から追い出されてしまいます。巣門のところで必死にしがみつこうとしているオス蜂を何匹かの働き蜂が囲んで追い出してしまうのです。
●新しい社会へ - 巣分れ
新女王蜂が誕生するときには、旧女王蜂の姿は、巣のどこにもありません。
女王蜂は、まもなく生まれてくる新女王と、若い働き蜂たちに巣を譲り、働き蜂の大半を引き連れて、どこか別の場所で巣をつくります。これがミツバチの巣分れと呼ばれるものです。
巣分れの日は、働き蜂は巣の入り口付近に集まります。そして数匹ずつが巣を離れて飛び立ち、だんだんと数を増やして飛び立っていきます。
数匹の付添いの働き蜂に囲まれて、女王蜂が飛び立つのを合図に、残りの働き蜂が一斉に勢いよく飛び立っていくのです。
この黒い大群は、巣づくりによい場所を見付けて、新しい巣をつくり、そして新しい社会をつくりあげていくのです。
一方、新女王蜂は、上空でオス蜂と交尾をし、産卵の力をつけると、また1匹だけで古い巣に舞い戻ってきます。そして、1週間ほどで産卵を開始します。
新女王蜂は、若い働き蜂とともに新しい社会をつくっていくのです。
王台の中で幼虫は、ローヤルゼリーをどんどん食べて成長を続けます。そして7日目にさなぎに変身します。さなぎは、はじめは真っ白な体をしていますが、成長と共にからだ全体が黄色みを帯びてきます。目がだんだん黒ずんでいき、だんだんと成虫に近づいてきます。
さなぎになって7日目に羽化した新女王蜂が、壁をまるく咬み切って、外へでてきます。女王蜂がさなぎである期間は7日間と、働き蜂の12日間と比べて5日間も短いのです。








